選択肢その3は、ガンそのものとは積極的に闘わない、なんとか楽にしてあげながら看取る、という緩和ケアです。
だんだん食欲がなくなってご飯の摂取量が落ちてきたら、人間は心配してなんとか食べてもらいたい、食べてもらわないと病に打ち勝てないと思って、強制給餌もしたくなるかもしれませんし、お医者さんから勧められるかもしれません。
ただし、お鼻が詰まってきている子の場合(もしくは喉周り、お口周りの子の場合)、腫瘍の場所によっては気道も狭くなっているので、無理やり給餌するとむせて誤嚥の可能性が高くなります。
なので、そうした子の場合は、強制給餌は勧められず、自発的に食べられるものだけにした方が良いそうです(獣医さん談)。
少ない量で高栄養が摂れるご飯を食べてもらえるといいですね(別に記事にします)。
ただ、動物というのは、具合が悪い時は食欲が落ちます。親方も真っ先に落ちます。
それは、消化にかかるエネルギーを減らして、治癒へのエネルギーに向けるためです。
食欲がないのは自然なことでもあり、具合が悪いのに無理に食事を摂ってもらうのは負担が増えることにもなります。
しかしながら猫さんの場合、急に食べなくなると肝臓に負担がかかり、あっという間に亡くなってしまうこともあるので(肝リピドーシス)、まだ体力があるうちは栄養を補ってあげることによって、回復力を高めることもできます。
この見極め、難しいですね。
でもでも、死期が近づいて食欲が落ちるのは自然なことなので、その時無理やり食べさせても、戻してしまったり吸収できなかったりします。
同様の理由で、病気が進行して食欲が落ちた場合は、胃ろうなどのチューブによる栄養摂取は勧められません。
それはお医者さんも言ってましたが、「行き過ぎ」になってしまうからです。
胃ろうが有効なのは、事故など何らかの事由でお口からご飯がとれないけど、体は元気で、ご飯さえ食べられたら普通に生活できる場合です。
一時的に胃ろうや食道ろうにして、何らかの障害を取り除くための手術に備える、と言う場合もあります。
「行き過ぎ」にならない選択をしたいものです。
それから、食事がちゃんととれない場合は、脱水を補ってあげるために皮下輸液もいいですね。
生きられるのに脱水というのは辛い状態だそうです。
お家で皮下輸液をしてあげられると通院の負担も減ります(それができる猫さんなら。うちは無理、通院も無理)。
しかしこの点滴も見極めが大事で、動物は旅立つ時に水分も減らして体から抜けやすくするので、いつまでもいつまでも、もう必要ないのに点滴でお水を入れ続けちゃうと、かえって負担が増します。
自分で食事を摂らなくなったら、あるいはおしっこがもうあまり作られなくなったら、というのも点滴をやめる一つの目安になるかもしれません。
痛さの緩和には、痛み止め(注射、点滴、パッチなど)も提案されるかもしれません。
そしてステロイドで炎症を抑えることも提案されるかもしれません。
体力が非常になくなっているときに、強いお薬、注射などがかえって負担を高めて、死期を早めてしまうケースを何件も見聞きしましたので、どうするかは人間家族の考え方にもよりましょう。
大抵はお医者さんに提案されたらそのままその通りにしてしまうと思います。
でも、ステロイドで炎症を抑えるのは一時的ですし、血液、心臓、腸など全てに影響を与えることも事実ですので、猫さんの状態を見極めないとですね。
ちなみに西洋医学の獣医さんのほとんどは、猫とステロイドは相性がいい、ステロイドはむやみに怖がるものではない、使い方でとても有効、人間のような副作用は出にくいなど、いろいろと怖くないですよってことも言われると思います。
確かにそういう面もあると思いますので、ほんとこれは人間家族の判断でしかないかなと思います。
ただ、自然療法をされている場合は、ステロイド使うと意味がなくなっちゃうに等しいと思われますので、併用は難しいでしょうね。
そして酸素。
お鼻のガンの場合、喉の方にも腫瘍が増大して息も苦しくなる子もいます。
気道が狭くなって、日頃は口呼吸をしない猫が、口でしか息を吸えなくなります。
気道が狭くなっている場合、亡くなる前に酸素室を提案されることもあるかもしれません。
生きている間は少しでも体を楽にしてあげたいと思えば、酸素もいいですね(これも別に記事にします)。
でも窒息する可能性のある子には、もしかしたら窒息までの短い間になるかもしれません。
窒息の子には、安楽死も選択肢に入れる先生もいらっしゃるかもしれません。
窒息の苦しみは飼い主さんが見ていられるものではない・・・キーちゃんも、最後はその可能性も考えておいてと言われました。
命の灯はいつかは誰でも消えるもの。
だけど、愛する子の最後が壮絶すぎる場合、人間が耐えられない。そんな理由で安楽死が選ばれることもあります😭
欧米では不治の病→積極的な治療をしないコースを選択する場合、安楽死が一般的。
文化の違いですね。
でも、命って強いんですよ。
親方は、早々に安楽死のことを最初に言われた時、絶対無理、そんなこと考えただけで泣いちゃうって思いました。
でも病気が進行して大変になり、鼻からも口からも耳からもゴボゴボ血を噴出させて、苦しくて苦しくて凄まじかった時、眠れない日々の中で、安楽死の方が本当はキーちゃんは楽なのかな?って一瞬だけよぎったことがあります。
もちろん親方は選べませんし選びませんけど、そのくらい苦しそうだったから、こちらも何をどうしてあげていいかわからず、本当に苦しかった。
だけど、その後ちょっと状態が落ち着いて奇跡的に復活した時(さらにその後専門医「神」との出会いが待っているの!)、命は命に任せれば良いのだと心から思いましたし、思えました。
一瞬でもそんな情けない考えがよぎった自分を猛省しました。
(安楽死を選ぶ方が情けないという意味ではありません。あくまでも親方のキーちゃんに対しての個人的な思いです)。
これも多分また別に記事にします。
最後に。
点滴や酸素などの緩和ケアは、一方から見たら「延命措置」と言えるかもしれません。
状態を長引かせてしまい、かえって苦しい思いをさせてしまうことも場合によってはあるでしょう。
本当はもっと早く旅立てたのに、脱水を補っている間に症状が進み、苦しい状態まで生きてもらうことになるかもしれません。
動物自身が、人間家族に気兼ねせず自分で選択していいなら、「全て自然に任せて」と言うんだと思います。
でも、彼らは自然界で自由に生きている子ではなく、人間と一緒に暮らしている家族です。
例えば冬の寒い時に毛布やあったかハウスを用意する、体にいいご飯を選ぶ、爪を切る、トリミングに行く、そんなことと同じで、一緒に暮らしている以上、快適で安全で安心で体が安らかであってほしいと願い、祈り、サポートしたいのも、家族だから。
愛しているから。
旅立つなら旅立ちやすいようにサポートしたい。
生きられるなら生きやすいようにサポートしたい。
ひとえにそれだけを思い、何かできることはないかと探します。
そして、いろんな形の奇跡(治るだけが奇跡ではありませんので)を願い、希望を捨てずにいるのが家族ですよね。
また、早く旅立たせても、苦しみを長引かせても、後悔して涙にくれるのが人間かもしれません。
でも、そのもとにあるのが揺るぎないまごうことない愛であれば、その気持ちはまっすぐに彼らの心に届きます。
キーちゃんが言ってました。
正解なんてないんだよ。一生懸命やればそれでいいんだよ。
緩和ケアの際に自宅でできることもいろいろ。
おなじみバランスアルファについてはまた別途。