キーちゃんの肉体がこの家から消えてしまった夜は、哀しい夜でした。
いつもキーちゃんにしていたように、キーちゃんを足の間に挟んで撫でている体(てい)、とか、一緒にテレビを見ている体、とか、エアキーちゃんと過ごしていました。
すると、背後で爪とぎが突然パァァァンッ!!て鳴りました。
びびびびっくりして振り返りつつ、「なんだ、キーちゃん、そっちにいるの」ってちょっと残念で笑えました。
親方は元来霊感なるものは持ち合わせておりませんので、ラップ音ていうの? スピリットのエネルギーで鳴る音を生まれて初めて聞きました。
木がミシっていう家鳴りとは明らかに異なります。
はっきりと、爪とぎが鳴ったんです。
何にもない爪とぎってひとりでに音なんて出ませんでしょ、普通。
うおお、スゴって思いました。
その後も、トイレのプラスチックがパァァァンッ!!
キーちゃんそこいるの。
エネルギービシバシじゃね。
キーちゃん元気いっぱいだからね。
活力の男だからね。
亡くなる前の日だって、押入れの天袋に低い猫タワーからジャンプして上ったくらいですからね。
とにかく彼のエネルギーは大きかった。
亡くなる時だってそう。
キーちゃんの体はボロボロだったかもしれませんが、まだ若く、そして比較的最後まで栄養を取れていたのと、キーちゃん自身のエネルギーが非常に強く大きかったため、見守っている限りは楽な旅立ちとは行きませんでした(はたで見ている程大変ではないらしいですけど)。
「そっと眠るように」って楽な旅立ちもありますが、キーちゃんに関しては「旅立ちも全力投球」って感じでしたね。
息も絶え絶えにとか眠るように逝くというのとは程遠い、まだまだ余裕があった、余力があったくらいなんですよ(変な表現ですけどね)。
あー、見えればね。
姿が見えればね。
普通のニンゲンに生まれて残念よ。
キーちゃんが、もうチューブもつけていない鼻も詰まっていないピッカピカの元気な姿でお家をウロウロしている姿を本っ当〜に見たかったです。
その後もキーちゃんを思って泣いていると、手にさわさわしたけ毛が触れたり、クローゼット開けると匂いがしたり、背中が温かくなったり、音が聞こえたり、キーちゃんがまだお家にいるなってわかる気配や合図は幾度もありました。
あ、妄想でも幻聴でもありませんよ。
亡くなった直後はそういう体験されている方は多いですね。
私の友達のワンコちゃんは、亡くなった直後ではありませんが、生前いつもそうしていたように、家族の集合写真に一緒に写ってらっしゃいましたよ。
見事に誰が見てもそのワンコちゃんなんです。いいねえ、嬉しいねえ、
ニンゲンは死後49日は此の岸にいると言いますが、亡くなった動物もしばらくは此の岸にいるそうです。
でも大抵は49日まで待たずに彼の岸に移行するんですって(中には飼い主さんが心配で行けない子とか、いろいろみたいですけど)。
昔事故で亡くなった親友白猫も、しばらくはうちにいました。
母が、真っ白な体でスポーンっておこたに飛び込んだ姿を見ましたし、父の寝ているところも訪問したみたいですし、我が家で唯一猫が嫌いな長姉の布団の上も、いつものようにズカズカと踏んで歩きましたし(長姉からクレーム・笑)、もちろん親方のところにもきました、というか、いつも通りの生活をしている様子でした(事故で突然だったから、しばらくは生きているつもりだったかも)。
いつも押入れで寝ていて、夜中にどさっと枕元に降りてくるのですが、そんな風にドサって降りてきた衝撃で目覚めたこともありましたし、周りを歩くツカツカした足音も聞こえました。
あ、シ、シスのところにも行ってるはずですが、シスはちょっと気づかなかったみたい・・・(😂)
キーちゃんの旅立ちは納得づくで、ある意味晴れやかでもあるほどの心地で受け入れていましたが、愛しているからそりゃ哀しい。
哀しすぎるほどに哀しい。
こんな風にキーちゃんが側にいてくれているのがわかっていても、キーちゃんを愛していればいるほど、その姿の見えない、声の聞こえない、からだに触れられない悲しみは、親方の愛する海よりも深かったです。
ティッピングランで沖の海底にエギを落とした深さよりも深かったです(わからないってね)。
人生で初めて「寂しい・・・」と感じました。